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性変形の影響が顕著に波漂流力特性に現れる結果が得られた。剛体運動のみの考慮では、固定浮体の場合とほとんど差が無く、L/λ < 1.0の範囲で運動の影響が大きくなるのみである。これは、通常スケールの浮体に対しては剛体運動が重要となることより明白である。しかし、数キロスケールの超大型浮体に対しては実際に入射する波を想定すれば、剛体運動の考慮のみでは全く不十分である。4)浮体変形を厳密に考慮した場合、長波長域では波漂流力はほとんどゼロに近づき、短波長になるにつれて大きくなるが、Lλ = 10.0に至っても固定浮体の場合の1/2程度である。また、剛体運動を考慮せず弾性運動のみを考慮した場合、短波長域になるにしたがって結果が正しくなるが、それでも剛体運動を考慮した結果とは差が生じている。つまり、Lλ = 10.0程度までの入射波に対しては剛体運動の影響が小さくともその影響を無視できないといえる。

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Fig.9 Wave drift forest of surge

5. 計算精度の検討
ここでは、本論における流体力解析の計算精度について述べる。Table1に実験用モデルと波漂流力の計算に用いた実機モデルでの計算精度をHeaveに関して示す。実験用モデルの要素分割は長手方向に100分割、幅方向に30分割の3000要素、実機モデルはl00分割×25分割で計2500要素による一定要素を用いて解析した。また、このときの特異点での特異積分範囲は、要素内の図心から最も近い辺までの距離の1/6の半径を持つ円を解析的に、それ以外の部分は数値的に処理した。両計算ともL/λ<8.0ではかなり精度が悪くなっている。
以上の結果は無限水深を対象としたものであった。一般に水深が浅くなるにしたがい計算精度が劣ることが考えられる。そこで、先の実機モデルにおいて水深が15mである場合についても検討してみた。ここでは、先と同様の2500分割の場合と特異積分で解析的に処理する円の半径を1/6から1/40に小さくし、さらに分割は100×15 = 1500の要素に減らした場合の計算精度について比較した。これは、解析的に特異積分を行う円の面積が小さい方が計算精度が向上することを確認した上でのことである。これについては本計算における10次モードまでの運動モードに対してL/λ = 2.0,5.0,9.0の3ケースについてTable2に示す。ここで、1次モードはHeave, 2次モードはPitchの剛体モードである。無限水深の計算結果と比較するとやはり計算精度が大分劣っており、かなり計算の状態は悪いといえる。しかし、ここで注目すべきは弾性モードの精度である。一般に論じられてきたのは剛体モードの計算精度であったが、これと比較して、短波長域では弾性モードの計算精度が剛体モードと比較して相対的にかなり向上する。つまり短波長域では剛体モードの影響は小さくなるので、応答まで考えた場合に、今日まで議論されてきたよりも相対的な計算精度は良いといえるのではなかろうか。
最後に水深15mでの弾性変形の計算結果を2500及び1500の要素分割での結果を比較して、実数部と虚数部をFig.10〜Fig.12にそれぞれL/λ = 2.0,5.0,9.0の場合について示す(Nは計算要素数)。計算精度が比較的よい範囲ではどちらの要素分割でも変形の結果は一致している。L/λ = 9.0では精度が悪化しており、両者の計算結果には特に実数部の波下側で多少ずれが生じている。

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Fig.10 Read and imaginary part of vertical displacement(L/λ = 2.0)

 

 

 

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